超大作の競馬初心者向け基礎講座の第二弾。
今回はレースに関する内容や馬券に関する内容を盛り込んでお届けします。
競馬のクラス分け
競走馬には、当然ですが個々の能力差があります。あまり強くない馬がめちゃくちゃ強い馬と一緒に走らされても、やる気をなくしますよね。
そのため(やる気の問題かどうかは別として)競馬では以下のようにクラス分けがされています。
クラス | 概要 |
新馬戦 | デビュー戦 |
未勝利戦 | 一度も勝利経験がない馬が出走 |
500万下条件戦 | 新馬・未勝利を勝った馬が出走 |
1000万下条件戦 | 500万下を勝った馬が出走 |
1600万下条件戦 | 1000万下を勝った馬が出走 |
OP特別 | 1600万下を勝った馬が出走 |
G3 | 賞金の高い格上のレース |
G2 | G3よりも格上のレース |
G1 | 最高峰レベルのレース |
1600万下までは条件戦となり、そこを勝ち上がった馬はOPクラスとなります。そのなかでもG(グレード)がつくレースは賞金も高く、ハイレベルな馬が多く出走。
Gのつくレースは重賞とも呼ばれます。最高峰のG1レースでは、1着賞金が最高3億円という宝くじもビックリの高額賞金が用意されています。
条件戦とは?
条件戦にある○○万とは、レースの賞金額のことではなく、その馬が稼いだ賞金を意味しています。また、賞金は本賞金と収得賞金に分けられます。
本賞金と収得賞金
本賞金とは、そのレースで5着までに入線して稼いだ賞金を指し、収得賞金は1着(重賞のみ2着まで)になったときだけ加算されるものです。
クラス分けには収得賞金が適用され、勝てば上のクラスに昇級し、負ければ本賞金は稼げてもクラスはそのままということですね。
つまり、500万下条件戦となれば、収得賞金が500万円以下の馬が出走するレースということです。
加算される収得賞金額
収得賞金の加算額は、以下のように決まっています。
クラス | 加算賞金額 |
新馬戦 | 400万円 |
未勝利戦 | 400万円 |
500万下 | 500万円 |
1000万下 | 600万円 |
1600万下 | 900万円 |
OP特別(2歳) | 800万円 |
OP特別(3歳) | 1,000万円 |
OP特別(3歳以上) | 1,200万円 |
重賞 | 本賞金の1/2 |
この収得賞金を基にして、各馬クラス分けがされています。それでは、クラスに関する基本的な用語を解説していきましょう。
昇級(昇級馬)
現在のクラスを勝ち上がり、ひとつ上のクラスへ行くことを昇級と言います。
基本的にクラスが上がると全体のレベルが高くなり、今までのクラスの条件戦では常に好走していた馬でも平気で惨敗することも有り得ます。
また、下のクラスを余裕しゃくしゃくで勝ち上がった馬は昇級しても即通用すると見込まれ、ある程度人気になりやすいです。
しかし、地味な勝ち方をした馬でも相手なりに走る馬が存在し、人気にはなりづらく狙い目とも言えますが、それを見極めるのは難しいですね。
降級
昇級とは反対に、上のクラスから下のクラスへ行くことを降級と言いますが、今は降級制度が廃止されました。
そのため、降級して下のクラスにいけば好走できて賞金が稼げる馬でも、降級できずに賞金が全然稼げない…ということもあります。
また、降級制度の廃止によってクラス分けの名称も、500万下が1勝クラス・1000万下が2勝クラス・1600万下が3勝クラスと呼ばれるようにもなっています。
とはいえ、まだなじみがなく浸透していない気もするので、○○万下と呼ぶほうが多いですかね。
格上挑戦
格上挑戦とは、滞在しているクラスより上のクラスのレースに出走することです。
1600万下条件クラスに滞在している馬が、OPクラスのレースに出走することがありますが、身分は1600万下なので、昇級馬とは言いません。
基本的には現級の馬から出走権があるため、そのレースに出走する馬が少なければ格上挑戦で出走することが可能です。
格上挑戦の馬が波乱を起こしやすいレースも存在するので、過去の傾向をチェックしていると面白い馬券が取れるかも知れませんよ。
OPクラスはエリート集団
クラス編成の仕組みを理解すれば、OPクラスにいる馬は条件戦を勝ち上がってきたエリートの集まりということがわかりますね。
OPクラスでも馬の強さはピンキリですが、それでも条件戦に留まっている大多数の競走馬よりは高い能力を持っていると言えるのです。
さらに限られた馬のみが、競馬の最高峰レースであるG1へ出走することが可能で、G1を勝利するのは本当に限られた馬のみなのです!
G1レース
JRAで行われるレースでもっとも格式の高いG1レースは、全部で24レースあります。
月 | レース名 |
2月 | フェブラリーS(ステークス) |
3月 | 高松宮記念 |
4月 | 大阪杯 |
4月 | 桜花賞 |
4月 | 皐月賞 |
5月 | 天皇賞(春) |
5月 | NHKマイルC(カップ) |
5月 | ヴィクトリアマイル |
5月 | 優駿牝馬(オークス) |
6月 | 東京優駿(日本ダービー) |
6月 | 安田記念 |
6月 | 宝塚記念 |
9月 | スプリンターズS |
10月 | 秋華賞 |
10月 | 菊花賞 |
10月 | 天皇賞(秋) |
11月 | エリザベス女王杯 |
11月 | マイルCS(チャンピオンシップ) |
11月 | ジャパンC |
12月 | チャンピオンズC |
12月 | 阪神JF(ジュベナイルフィリーズ) |
12月 | 朝日杯FS(フューチュリティステークス) |
12月 | 有馬記念 |
12月 | ホープフルS |
日付の関係上、月がずれるレースもありますが、おおよそこの通りになります。春と秋~冬にかけて開催されていることがわかりますね。
では、それぞれのG1について解説していきます。
2歳限定G1
2歳馬は人間でいうと小学生くらいの年齢。
まずはここが人(馬)生初の大舞台です!
阪神JF
- 2歳牝馬限定
- 阪神芝1600mで行われる
- タフなコースなので強い馬が走りやすい
- 外枠が有利になりやすい
朝日杯FS
- 阪神芝1600mで行われる
- 2014年から阪神競馬場で開催
- タフなコースなので強い馬が走りやすくなった
ホープフルS
- 2017年に新設されたレース
- 中山芝2000mで行われる
- 2019年・2020年とこのレースを制した馬が、翌年の皐月賞も制覇
3歳限定G1
3歳は高校生・大学生くらいでしょうか。
3歳限定G1には「クラシック競走」と呼ばれるレースがあり、それらをすべて制した馬を三冠馬と呼びます。
牡馬クラシックには牝馬も出走可能ですが、この時期になると性別による体力差が出てくるので通用しないことが多いです。
桜花賞
- 牝馬クラシック第一弾
- 阪神芝1600mで行われる
- ディープインパクト産駒が強い
- 外枠が有利になりやすい
優駿牝馬(オークス)
- 牝馬クラシック第二弾
- 東京芝2400mで行われる
- 2400mはこれまでほとんどの馬が未経験
- 騎手が距離を意識してスローペースになりやすい
- そのため意外とスタミナよりも直線のスピード勝負になる
秋華賞
- 牝馬クラシック第三弾
- 京都芝2000mで行われる
- 厳密にはクラシックレースには含まれない
- 桜花賞・オークスと違い、小回りの直線が短いコースで行われるために紛れやすい
皐月賞
- 牡馬クラシック第一弾
- 中山芝2000mで行われる
- 小回りで直線に急坂があるトリッキーなコースなので紛れやすい
- しかし2014年の競馬場改修以降、強い馬が走りやすくなった
東京優駿(日本ダービー)
- 牡馬クラシック第二弾
- 東京芝2400mで行われる
- ホースマン全てが目指す究極のレース
- 内枠が有利になりやすい
- 2007年にはウオッカが64年ぶりの牝馬によるダービー制覇の快挙を達成
菊花賞
- 牡馬クラシック第三弾
- 京都芝3000mで行われる
- 夏を越して力を付けてきた馬(上がり馬)が台頭することがある
- 全ての馬が未経験の距離なので大波乱になる年も
NHKマイルC
- 3歳の短距離王決定戦
- 東京芝1600mで行われる
- クラシック競走ではない
- もともとはクラシックに出走権が無い「外国産馬※」のために創設される
- 最初の数年間は外国産馬が強かったが、近年は内国産馬が強い
※外国産馬とは、外国で産まれた後に日本に持ち込まれてた馬のことで、新聞などには○外(まるがい)と表記される
古馬短距離G1
3歳のクラシックは一生に一度しかない舞台なので、距離適性など関係なく出走したいと考えるオーナーは多いです。
しかし、古馬になるとそれぞれの得意な距離でG1を目指すようになります。
現在の日本競馬では中長距離が重視されるので、短距離界では絶対的な王者が誕生することは少ないですね。
高松宮記念
- ローカル競馬場で行われる芝唯一のG1レース
- 中京芝1200mで行われる
- 年によって馬場の傾向が変わり、予想が難しい
- 長い直線と急坂があるので、単調なスピード馬では通用しない
安田記念
- 東京芝1600mで行われる
- 道中のペースが速く、距離以上のスタミナが求められる
- 瞬発力が武器の馬より、トップスピードを長く持続出来る馬が好走しやすい
- 香港や豪州の馬はそういうレースで強く、出走してくると脅威
スプリンターズS
- 中山芝1200mで行われる
- 直線に急坂があり、瞬発力より持続力がある馬が良い
- 安田記念と同じく、香港や豪州の馬が強い
マイルCS
- 京都芝1600mで行われる
- 直線は平坦で、瞬発力のある馬が有利になりやすい
- そのためディープインパクト産駒が強い
- 安田記念と同じ距離でも、求められる適性は違う
古馬中・長距離G1
日本競馬で最も重視されるカテゴリーです。
これらのG1を制した馬は種牡馬としての価値が上がり、優秀な遺伝子を伝えていきます。
大阪杯
- 2017年に新設されたG1レース
- 阪神芝2000mで行われる
- 初代王者はキタサンブラックで、オーナーは北島三郎さん
天皇賞(春)
- 日本最長距離のG1レース
- 京都芝3200mで行われる
- ペース判断が難しく、稀に人気薄の大逃げが嵌る
- 内を通る馬が圧倒的に有利
宝塚記念
- 阪神芝2200mで行われる
- ファン投票が行われ、上位人気馬に優先出走権が与えられる
- 非根幹距離のG1で、このレースが初G1制覇となる馬も多い
- 雨が降りやすい時期で、馬場が重くなるとパワーのある馬が有利
天皇賞(秋)
- 東京芝2000mで行われる
- 内枠が有利になりやすい
- ディープインパクト産駒が強い
- 近年は3歳馬が菊花賞ではなく、こちらに出走してくることも
ジャパンC
- 東京芝2400mで行われる
- 外国馬を招待するレースで、1着賞金は日本最高の3億円
- 設立当初は海外の二流馬にも歯が立たなかったが、近年は日本馬が圧倒的に強い
- 日本の最強クラスが集まるレースで、非常に見応えがある
有馬記念
- 中山芝2500mで行われる
- ファン投票が行われ、上位人気馬に優先出走権が与えられる
- 3歳と古馬トップクラスが集うため、世代間争いが楽しみ
- 年内最終戦で、余力が残っているかが好走のポイントになる
古馬牝馬G1
以前は牝馬限定の古馬G1が少なく、牝馬は活躍の場が限られていました。
徐々に古馬牝馬路線も充実してきています。
ヴィクトリアマイル
- 古馬牝馬戦線の充実のため、2006年に新設されたレース
- 東京芝1600mで行われる
- 内枠・先行有利になりやすく、人気の差し馬が届かないケースが多々ある
- 15年には人気薄の前残り決着で、三連単は驚愕の2000万馬券に!
エリザベス女王杯
- 京都芝2200mで行われる
- 元々は牝馬クラシック最終戦で、秋華賞新設により古馬の目標レースとなる
- 3歳牝馬と古馬牝馬のトップクラスが争うレース
- 非根幹距離で行われるため、同じ馬が2年連続で好走しやすい
ダートG1
日本では芝が主流のため、ダートG1は少ないです。
地方競馬はダートがメインなので、ダートで活躍する馬は地方と中央の交流レースで活躍しています。
フェブラリーS
- 東京ダート1600mで行われる
- JRA初のダートG1
- 直線が長く、逃げ切るのは難しい
- ダートのレースだが、芝の中距離血統がよく走る
チャンピオンズカップ
- ローカル競馬場で行われる唯一のダートG1
- 中京ダート1800mで行われる
- 元々はJCD(ジャパンカップダート)という名称で、ジャパンカップの前日に行われていた
- 未だにJCDと呼んでしまう人は多い…はず
三冠への挑戦
2歳以降にデビューした競走馬は、まず3歳クラシック戦線を目指します。
クラシック競走とは古くから施行されていた伝統的なレースを指し、日本のクラシックは競馬発祥の英国クラシックをモデルにされています。
そのため、1996年に創設された牝馬クラシック最終戦の秋華賞は日本独自のレースで歴史も浅いために、厳密にはクラシック競走には含みません。
毎年約8,000頭前後も産まれるサラブレッドからクラシックに出走できるのは、各レース18頭ずつ。出走するだけでも大変なことなんですね。
そしてクラシックは全て違う競馬場と距離で行われるため、全てを制するのはよほど力が抜けていないと不可能。
長い日本競馬史上の中で三冠馬となったのは、牡馬7頭と牝馬4頭のみ。そのうち無敗で三冠を達成したのは、シンボリルドルフとディープインパクトのわずか2頭だけです。
そして古馬へ
3歳クラシックを走った馬も、クラシックには出られなかった馬も、4歳以降は古馬となってそれぞれが得意の距離で活躍の場を求めます。
短距離路線、中長距離路線でそれぞれ複数のG1が行われますが、やはり競馬場と距離が違えば求められる適性も異なります。
一生一度のクラシックとは違い毎年出走しようと思えばできますが、それでも同路線のG1を全て勝つのは至難の業。
現在はドバイや香港・欧州や豪州のG1にも遠征する馬が増え、世界を相手に活躍することが多くなりました。個人的には国内で強い馬が一緒に走るのを観たいと思うんですけどね。
競馬の脚質
競馬のレースでは、最大18頭が出走することになり、スタートしてすぐに先頭を走る馬から、最後方に位置する馬がいます。
レースをどの位置で運ぶかを脚質(きゃくしつ)といい、馬によってどの位置で競馬を進めると最大限に力を発揮できるかは違います。
脚質には大きく分けて5つあります。
逃げ
逃げとは、スタートしてから先頭に立ってレースを進める脚質です。
ペースを作る役割もあり、逃げ馬は他馬に邪魔されることなく気分よく走れれば、思わぬ大穴をあけることもしばしば。逆に、他馬に絡まれたりすると一気に走る気を失くし、実力以上に大敗することもよくあります。
人気薄の逃げ馬はマークが甘くなりますが、人気馬は逆にマークされやすくなるので逃げ切るのは簡単ではありません。
人気を背負って逃げ切れる馬は、本当に強い馬とも言えるでしょう。
歴代の逃げ馬で有名なのは、サイレンススズカやミホノブルボン、最近ではキタサンブラックなどがいます。強かったというより個性派で人気があったツインターボ・メジロパーマーなど、逃げ馬は目立つので人気者になりやすいこともあります。
先行
先行とは、全体の中で好位グループでレースを進める脚質です。
逃げ馬ほどではないですが、先行馬も距離ロスや進路が塞がるリスクが少ないために好走する可能性は高くなります。
気性の落ち着いている馬などは周りに馬がいても力を発揮できるので、力のある先行馬は非常に安定感があります。
歴代の最強馬候補と呼ばれる馬の中にも先行して押し切るタイプの馬が多く、勝ちっぷりは派手ではないですが安定感は抜群でした。
シンボリルドルフにメジロマックイーン、タイキシャトルやテイエムオペラオーなどは、先行してほとんど崩れることのなかった名馬です。
差し
差しとは、道中は好位グループの後ろに付けながら徐々に前との差を詰め、最後の直線で勝負する脚質です。
逃げ・先行に比べて最終コーナーで外を回ったり、直線で進路が塞がるリスクが高くなるために力を発揮できない可能性が高くなります。
それなら逃げるか先行したらいいじゃないか?とも思いますが、スタート後のダッシュ力がなかったり、先行しようとすると抑えがきかず暴走する馬もいます。
そのため、前半は焦らずに折り合いに専念するほうが、好成績に繋がりやすいこともあるんですね。あとは、じっくり脚を溜めることで直線で鋭い伸びを見せる馬もいます。
1990年代の中盤に日本競馬界を一変させたサンデーサイレンスの産駒には、気性が激しい代わりに、直線ではすさまじい瞬発力を繰り出す馬が多数いました。そういった馬は先行するよりも直線に賭けたほうが結果が出やすいのです。
歴代の名馬にはナリタブライアン・スペシャルウィーク・ウオッカ・ブエナビスタなどがいます。
追い込み
追い込みとは、道中ほぼ最後方を追走し、最後の直線に全てを賭ける脚質です。
追い込みの馬は周りに馬がいることを嫌ったり、自分のペースで走らせることで最大限の力を発揮することができ、逃げ馬と似た性格とも言えますね。
道中は後ろを走っているので、最終コーナーでは外を回すロスや、直線で前が詰まるリスクがもっとも高くなります。
ただ、直線一気が決まればインパクトが強く、追い込み馬も逃げ馬と同じように人気者になりやすいことがあります。
歴代の名馬ではディープインパクト・デュランダル・ヒシアマゾンなどがいます。
捲り
捲り(まくり)とは、道中は後方を追走しながら最終コーナー手前でスパートを開始し、直線入口では先頭集団に並びかける脚質です。
スタミナはあるけど直線だけで勝負する瞬発力がない、けどスタートしてからのダッシュも弱いという馬は、早めスパートで弱点を補います。基本的に、ロングスパートに耐えられるだけの能力がある馬でなければ成功しづらいですね。
毎回捲りをする馬というのは少ないですが、近年ではゴールドシップがスタミナの塊という馬で、捲りによって大成した馬と言えるでしょう。
はい、今回も長くなりましたが、次回は初心者のために馬券について解説していきます。そこまで読破すれば、もはや立派な競馬通ですよ!

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